※Truncated SVD (Singular Value Decomposition) って和訳ありますか?勝手に打ち切り特異値分解としました。
はじめに
機械学習アルゴリズムで特異値分解(もしくは固有値分解)をするときは、だいたい、大きい(もしくは小さい)方からk個だけ特異値/特異ベクトルを取り出すことが多い。NMatrixに実装されている特異値分解は、LAPACKのラッパーで、全ての特異値を求めるスタイル(Full SVD)なので、分解したい行列が大きい場合、実行時間が大きなものとなる。そこで、Randomized AlgorithmなTruncated SVDを実装した。
randsvd | RubyGems.org | your community gem host
NMatrixがARPACKとかに対応すると、存在意義を失うかも。
インストール
行列の扱いにはSciRubyのNMatrixを使用する。また、アルゴリズム中で特異値分解とQR分解を行うため、NMatirx-Lapackeに依存する。
$ gem install randsvd
使い方
内部の特異値分解で、NMatrix::LAPACK.gesvdを使うものと、NMatrix::LAPACK.gesddを使うもので二種類のメソッドを用意した。わかりやすさのため、メソッド名はNMatrixのものと同じにした。gesddの方が、分割統治法で速いらしいっすよ。
require 'randsvd' # 適当に、分解する行列として、m x nの大きさの行列を用意する。 m = 1000 n = 100 input_matrix = NMatrix.rand([m, n]) # 欲しい特異値の数を定義する。 k = 10 # 特異値分解を実行する。分解したい行列と、欲しい特異値の数を指定する。 # 特異値が大きいほうからk個の特異値と特異ベクトルが得られる。 # ここが u, s, vt = RandSVD.gesdd(input_matrix, k) でも良い。 u, s, vt = RandSVD.gesvd(input_matrix, k) # 上の例では、 # u は m x kの大きさの左特異ベクトルが並ぶ行列、 # s は k個の特異値が並ぶベクトル、 # vt は k x nの大きさの右特異ベクトルが並ぶ行列となる。 # これら特異値と特異ベクトルで元の行列を復元する場合、以下の様になる。 reconstructed_matrix = u.dot(NMatrix.diag(s).dot(vt))
ベンチマーク
Core m3 1.1GHzで8GBメモリのMacBookで、ベンチマークとってみた。 10,000 x 1,000の大きさでランクが10な行列の特異値分解を行う。 欲しいのは特異値の大きい方から10個となる。 NMatrix::LAPACKの特異値分解は、実際には、必要な特異値を取り出す処理(例えば u=u[0..m - 1, 0..k - 1] みたいなの)が必要だけど、 速度に大した影響ないだろうと思って省略した。
require 'benchmark' require 'randsvd' m = 10000 n = 1000 k = 10 mat = NMatrix.rand([m,k]).dot(NMatrix.rand([k,n])) Benchmark.bm 10 do |r| r.report 'NMatrix' do u, s, vt = mat.gesvd end r.report 'RandSVD' do u, s, vt = RandSVD.gesvd(mat, k) end end
実行結果は以下のとおり。totalを見ると、RandSVDの方が約10倍くらい速い。
$ ruby bench_svd.rb user system total real NMatrix 64.910000 1.300000 66.210000 ( 31.076849) RandSVD 6.790000 0.860000 7.650000 ( 5.485305)
アルゴリズム
乱択アルゴリズムな特異値分解は、色んなバリエーションが提案されている。 NIPSのワークショップの論文に、良い感じに要約されたアルゴリズムが掲載されていたので、主にこれを参考にして実装した。
P.-G. Martinsson et. al, “Normalized power iterations for the computation of SVD,” In Proc. of NIPS Workshop on Low-Rank Methods for Large-Scale Machine Learning, 2011.
乱択アルゴリズムな特異値分解では、ランダム行列由来の直交行列との積で、元の行列のサイズを縮めるということをやっている。 上記の論文では、(近似精度の高い?)直交行列を得るのに normalized power iterations というのを行う。 が、これをしなくても、そんなに精度的には変わらなかった(けど実行速度は落ちる)ので、RandSVDでは、デフォルトでは切っている。 normalized power iterationsを試したければ、gesvd/gesddメソッドで、繰り返し回数を指定するとよい(デフォルトでは0回になっている)。
# 例えば5回おこなう場合: t = 5 RandSVD.gesvd(mat, k, t)
おわりに
つまらないものですが、よろしくお願い致します。